少子高齢化が続いてきた日本は、本格的な人口減少社会に突入した。2019年の出生数は過去最少、死亡数は戦後最多となり、人口減少は50万人台に初めて達した。しかも、コロナ禍で、2020年は婚姻数や妊娠件数が顕著に減った。2021年以降も出生数の減少スピードが加速する可能性は大きい。
人口減少幅は年々拡大し、今後40年ほどで総人口は3割ほど減り、100年もしないうちに半分ほどとなる。若い年齢の人口ほど減っていくので働き手が不足し、マーケットが縮小する。税収は落ち込み、防衛や治安のための予算も確保しづらくなる。世代間の支え合いの仕組みとなっている社会保障制度も行き詰まりを見せるだろう。
人口に関する未来予測は、かなり遠い将来まで大きくは動かし得ない「変えられない未来」である。人口減少を前提として未来を考えざるを得ないが、最も重要なのは変化の先を正しく見通すことである。
「人口減少問題に関する調査報告書~人口減少社会の展望と対策」は公的データをベースとして、人口減少に伴う社会の変化をさまざまな角度から可視化することを第一の目的とする。また、コロナ禍による新たな変化の分析も加える。その上で、人口減少社会に耐え得る社会を築いていくための提言を行うものである。
- 序章 はじめに
- ・本格的な人口減少社会に突入
- ・変えられない未来
- 第1章 少子高齢化の背景
- ・人口減少に転じた平成時代
- ・団塊世代の高齢化と非正規雇用の増加
- 第2章 少子高齢社会の現状と将来予測
- ・想定より早かった出生数90万人割れ
- ・出産可能な年齢の女性数が急減へ
- ・2040年代には毎年90万人ずつ減少
- 第3章 コロナ禍で加速する出生数減
- ・妊娠件数や婚姻数が激減
- ・2021年の出生数は70万人台か
- ・勤労世代も想定以上に減少
- ・高齢化率をさらに押し上げる
- 第4章 2020年代の課題
- ・患者数増大で医療費が急伸
- ・「親子型の老老介護」が増加へ
- ・「ダブルケア」の背景にある晩婚・晩産化
- ・ハイペースで働き手が不足
- ・社員の高年齢化で企業が停滞
- ・経営者の後継者不足が深刻化
- 第5章 2030年代の課題
- ・民間事業者の撤退が始まる
- ・自治体職員も募集難となる
- ・「地域の足」が寸断し通学などが困難に
- ・ドライバー不足で通販に影響
- ・東京都も人口減少と高齢化
- ・3軒に1軒が空き家
- ・男性の3割弱、女性の2割弱が未婚に
- 第6章 最大の危機は2040年代初頭
- ・低収入・無収入の高齢者が増加
- ・鳥取、高知両県は50万人割れに
- ・農村地帯に「存続危惧集落」広がる
- 第7章 政府の対策は「切り札」に程遠く
- ・少子化対策ではなく「子育て支援策」
- ・社会保障財源に偏った高齢者対策
- ・当て込み切れない外国人とAI
- ・女性や高齢者頼みには限界も
- 第8章 人口減少社会に向けた5つの提言
- ・真の弊害は社会が「守り」に入ること
- ・提言1 若者が躍動できる環境を作ろう
- ・提言2 国として必要な人材を育成しよう
- ・提言3 少量生産・販売モデルに転換しよう
- ・提言4 地域ごとに人口集約都市を作ろう
- ・提言5 高齢者向け低家賃住宅を整備しよう
- 終章 おわりに
- ・日本人自身で状況を打開するしかない