今こそ政治家に必要なネットマーケティングという考え方

ネットを使って、「誰に」「何を」「どう」わかりやすく伝えていくのか。政治家にとってなぜネットマーケティングが必要なのかを、ITコーディネーターの舘田智氏が事例付きで紹介した。また、IT業界では当たり前の“あの広告”が政治の世界ではブルーオーシャンであるという注目の提案もあった。

政治家にとってのネットマーケティングとは?

「私に投票してください」とお願いすることではなく、「〇〇さんに投票したい」と思わせるための活動がマーケティングです。

世論調査では「支持政党のあり・なし」が問われますが、マーケティング的には大きく次の4つに切り分けられます。

マーケティングでは、この中の「支持候補者なし・支持政党なし」の人たちをどう動かすかが重要です。

多くの政治家のスローガンやキャッチコピーは、マーケティングでいうところの「誰(ターゲット)」が欠けています。すべての人を対象にした汎用的なメッセージでは、浮動票を持っている「支持候補者なし・支持政党なし」の「なしなし層」にはまったく響かないのです。

例えば「子育て支援の推進」という漠然としたスローガンに「誰に」「何を」「どうするか」を明確に入れ込むとした場合、

誰に「共働きの母親(が安心して働き続けられるように)」
何を「認定こども園の設置数を」
どうする「各自治体ごとに30%増加させる」

となります。
こうして初めて、共働きの母親たちには、メッセージが“自分事(じぶんごと)”として受け止められるようになるのです。

このように「誰に」「何を」「どう」話すか、さらに「ネットを使って、どうわかりやすく伝えていくのか」という活動が「政治家のネットマーケティング」であるという定義をした上で、話を進めていきます。

公式サイトは「スマホ対策」がポイント

「なしなし層」の投票行動は、まずポスターや街頭演説などのネット外で「候補者名を認知」し、「候補名で検索」します。その検索結果から「公式サイトを見る」「SNSのチェック」「他候補者との比較」などを行った上で「選択」「投票」するのです。

しかし多くの政治家は、自身の公式サイトやSNS、それがどのように見られているのか理解と対策がされていないのです。

公式サイトの活用対策は、ほぼイコール「スマホ対策」といえます。まずは、自分が持っているスマホでサイトがきちんと表示されているのかを確認してください。

また、最近は暗号化対策(https)ができていないと、アドレスの部分に「安全ではありません」と表示されてしまいます。政治家として決してあってはならないミスですが、有名議員のサイトでも散見されるのが実情です。

ある議員のサイトでは、まず「安全ではありません」という表示が出ます。また、メッセージが非常に漠然としているので、この人が何をやってくれるのか、まったくわかりません。

別の例ですが、やはりスローガンがわかりづらく、表示されたYouTubeの番組は長い。YouTubeは非常に有効な手段ですが、興味がないものに関しては30秒も見てもらえません。

さらに別のサイトではトップ写真とメッセージがつながっていません。「祭り」の写真を掲載しながら「経済再生」「日本を守る」と訴えてもまったく響きませんよね。
もう一つ、これも数多くある悲惨な例なのですが、「パソコンの公式サイトが縮小表示されてしまう」ものです。有権者は見づらい画面でボタンを押すこともできず、そもそも文字が読めない。皆、数秒でこのサイトから立ち去るでしょう。

また、ある方はFacebookとTwitterを並べて表示しているのですが、スマホで表示すると両方とも指が触れて永遠にスクロールしてしまい、最後までは読むことができないのです。
このように政治家の公式サイトは、まず、スマホ対策が課題です。あれこれする前にまずここをしっかりやっていただきたいと思います。

もう一つ「SEO(検索エンジン対策)」ですが、数年前には一時有効な時もありましたが、今は一般人がテクニカルに何かしようとしても検索順位が上がらないばかりか、場合によってはグーグルからペナルティーを課されて表示順位が下がる、表示されにくくなるというリスクの方が大きいです。
現在、検索順位を上位表示させようと勧誘してくる商品やサービスの99%は詐欺です。絶対に使わないようにしてください。

SNS活用で大事なこと

基本的にインターネットでのマーケティングでは、FacebookやTwitterでつぶやくよりも、公式サイトや公式ブログなどの「ストック型」に集約した方が効果的です。
なぜかというと、FacebookやTwitter、またはYouTubeでの発言は「フロー型」と言われ、流れていくようにどんどん消えていき、検索上位にはなりにくいからです。一方で公式サイトやブログでの発言は情報が蓄積され、グーグルがそれをクローリング(巡回)し、例えば「防衛政策」や「少子化対策」で検索した際、上位表示を狙うことが可能です。

公式サイトをしっかり作った上で、Facebookは知り合い向けに、Twitterなどは速報性のあるものをつぶやき、文字だけで理解しづらい内容はYouTubeを使って解説。後援会などの組織がある場合は、ほとんどの人が使っているLINEの公式アカウントも有効です。

一方で、InstagramやTikTok(ティックトック)などは、政治には結び付きにくいと考えられます。リソースは限られているので、むやみに間口を拡げるのではなく優先順位の高いものから取り組みましょう。
基本的な活用のサイクルとしては、まず公式サイトで書き、それをTwitterでリツイート、Facebookでシェア、解説が必要なものはYouTubeで補足するという流れです。

SNS活用のポイントですが、トランプ大統領のように何を言っても注目される人以外は、日記のような投稿はやめた方がいいと考えています。

「誰に、何を(どうしたいから)、こんな活動をした」
「誰と、何を(なんのために)、意見交換した」

など、具体的に書かなければ意味がないのです。
また、炎上を煽るような感情的なメッセージには反応せず原則「スルー」してください、この「スルーする力」がない人はSNSをしないほうがいいと思います。また、「いいね・フォロワーの数=支持」ではありません。フォロワーを買うようなことは絶対にしないでください。そんなことはすぐにバレます。長すぎる動画も意味がありません。120秒(できれば30秒)以内を目安としてコンパクトにまとめるといいでしょう。

ネット広告の活用ポイント

一般のビジネスでは、当たり前のように活用されている検索広告ですが、政治の世界ではほぼ活用されていません。検索広告からは単に公式サイトのトップページに飛ばすのではなく、検索キーワードに連動した内容「ランディングページ(着地ページ)」に飛ばすことも重要です。

選挙期間中は候補者名で検索されることも多くなりますが、そういったキーワードに連動した検索広告は本人であれば必ず上位に表示されるので、掲示板の噂など本当か嘘かわからない内容ではなく、検索広告を通してより正しい情報に導くことができるようになります。
検索広告は比較的安価で、法改正により選挙中でも使えるようになりました。そして、今はまったく使われていないブルーオーシャンでもあります。これにより見込み投票者を逃さないようにできます。

ネット広告は現在、非常に高度化しているため、政治家自身や事務所のスタッフですべて対応することは難しいので、専門家や広告代理店などに任せるのが一番だと思います。

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舘田智氏は、昼間の顔はITコーディネーター、夜はカフェとバーを経営し、「一人二毛作」のマルチワーカー(複業家)です。著書に『マンガでわかるWebマーケティング シーズン2』(インプレス刊)などがあります。