日本の住環境に「中古リノベーション」という第4の選択肢を

image_print

不動産市場に「中古リノベーション」という新たな市場を作り上げたカチタス。今回は、三和銀行から議員への立候補、議員秘書を経て経営コンサルタント、リクルートとキャリアアップしながら、全く新しいビジネスモデルを構築し、顧客や社会の課題解決を行っているカチタスの代表取締役社長を務める 新井健資さんに自社のビジネスモデルや今後の展開について話を聞いた。

空き家率30%時代を見据えたリノベーションビジネス

空き家問題がニュースでもたびたび取り上げられているように、年々増えていく空き家は大きな社会問題になっています。総務省調査によると、全国の空き家数は2013年で約820万戸、住宅数に対する空き家率は13.5%でした。新築住宅の供給が続いていることや少子高齢化、相続による空き家化等の要因により毎年60万戸以上増えていくと予測され、このままでは2030年に空き家率は30%を超える見込みです。

カチタスは、そんな日本の社会課題を解決する事業を行っている会社です。空き家を個人の方から直接買い取ったのち、今の時代のライフスタイルに合わせて設備などを新品に交換し、間取りを変えるリノベーションを行い、新たな価値を追加してお客様に売却する中古リノベーションのビジネスを行っています。もともとは競売物件を買い取り販売するビジネスを行う会社でしたが、私が入社した時期に仕入経路を大転換して今の形になりました。

空き家、と言っても種類はさまざまで賃貸住宅もあればマンションもあります。そのなかでカチタスは戸建てにターゲットを絞っています。

そもそも空き家になってしまう理由としては圧倒的に相続によるものが多く、相続した側が「解体費用をかけたくない」「更地にしたら固定資産税が高くなる」といった理由で放置していることが主な原因です。

古い空き家は放置しておくとそのままでは住めない状態に荒れてしまいます。さらに前の居住者が残した家具や荷物がそのまま残っていることも多いため売却しにくく、価格を下げても買い手がないという負の連鎖が生まれてしまいます。

カチタスは残った荷物が放置された空き家も買い取り、片付けまでを請け負っています。「親が大事に建てた家を壊すのは忍びない」「なんとかしたいがどうにもならない」という売主も少なくなく、空き家を買い取るビジネスはお客様の肩の荷を下ろすことだと考えています。

2016年には、同じような事業を展開しているリプライスという企業と経営統合して事業規模を拡大しています。

カチタスがビジネスを行っているエリアは人口5万人~30万人規模の地方都市です。地方都市といっても過疎地ではなく、北海道であれば釧路、旭川、室蘭など、大手企業がそれほど参入していないエリアを中心に事業を展開しています。

主な顧客層は東京、大阪、名古屋の3大都市圏を除いた2400万世帯で、日本の人口の約半分を占めます。地方には高所得層の比率は少なく、世帯年収200万円~500万円がボリュームゾーンとなっています。

リプライスは人口20万人~50万人規模の都市をターゲットとしており、東京23区など、もう少し都心部エリアを対象にビジネスを展開しています。

これらの世帯でも手が届く価格で、月々の支払額が家賃と同じかそれ以下の設定をして、リノベーションした住宅を販売しています。日本全体の平均世帯年収は約400万円ですが、地方に行けば行くほど世帯年収が減少傾向にあり、潜在的に安い家を求める層は多いと予測しています。

参入が少ない中古戸建て市場でビジネスを拡大

中古リノベーション市場全体で見ると、同じ空き家であってもマンションと戸建てでは大きな違いがあります。

マンションのリノベーション販売市場では、2017年の年間販売戸数が1000件を超える会社が3社あり、4位以下の差が小さく競争が激しい市場となっています。マンションの場合はリスクが少なく、多くの会社が参入しやすい環境にあることが背景にあります。

一方、戸建てのリノベーション販売市場では、カチタスグループは4076戸で首位となっています。一般的に市場シェアは1位と2位が僅差であることが多いですが、戸建てリノベーション販売市場では2位の12倍という圧倒的な差があります。言い方を変えると、それだけ市場参入が難しい市場だということです。

参入が難しい理由の一つとしては、戸建ては建物そのものに雨漏りやシロアリといったリスクがあることが挙げられます。戸建ての場合、多くの所有者が建築後は基本的にメンテナンスを行いませんが、マンションの場合は修繕積立金を徴収して定期的にメンテナンスを行うためリスクが低くなります。

実は日本の住宅が一番傷むのはシロアリが原因の腐食だと言われています。阪神淡路大震災のときに倒壊した家は築年数よりもシロアリの腐食の方が影響が大きかったとの調査結果もあり、非常に大きいリスクとなっています。そのため買い取る前には専門業者に頼んで床下に潜り、シロアリの腐食箇所を調べるようにしています。多少の被害であれば修繕可能ですが、腐食が2階にまで達してしまうと住宅を買い取ることはできません。


また木造で築20年を過ぎると雨漏りのリスクが高くなるので事前に工務店に依頼して調査し、販売前に必要となる修理範囲を把握するようにしています。他にも社内でクレーム事例や失敗事例を蓄積・共有しながらリスクを排除する努力を行っています。

参入が難しいもう一つの理由は、販売価格が低く事業拡大が難しいことです。複数の大手不動産仲介会社が同様のビジネスを行っていますが、仲介会社は在庫を持たずに住宅を売りたい側と買いたい側をつないで仲介手数料を得るビジネスモデルです。仲介手数料は売価に比例するため、低価格の中古住宅では利益が出ません。地方で500万円程度の空き家は仲介会社が扱わないため競合が少なくなります。

社会問題を解決しながら企業としても成長する

西洋の石造りの建築と比べて日本の木造建築は長期間維持できないと言われていますが、全くそんなことはなく、大事にメンテナンスしてあげることで十分長く住むことができます。私自身も都内で妻の祖父が建てた築90年の木造戸建てをリフォームして住んでいます。

カチタスでは築年数が30年であっても40年であっても買い取り額には影響しません。住宅はあくまでも築年数による金融価値ではなく、立地や住みやすさといった居住価値を評価しているためです。住宅を購入する側にとっても固定資産税が新築と比べて圧倒的に安いといったメリットがあり、中古住宅には新築にはない魅力があります。

それでも中古市場が伸びない理由は、日本人の新築志向、清潔志向が主な原因だと思っています。そのため前居住者の使用感を極力減らすことで、新品のようにきれいな家だと感じてもらうことが重要だと捉え、水回りの設備はもちろん、手に触れるドアノブ等を交換して清潔感を重視したリノベーションを行っています。

また地方の物件では駐車場スペースを広げるなど、ニーズに合わせて手を加えることで物件の価値を高めています。

購入者、売却者、施工会社、販売店など、ビジネスに関わる人すべてに喜んでもらうことを目指しながら、事業は順調に成長し、2018年度の売上は800億円を超え、2017年12月には東証一部上場も果たしました。

カチタスは、「新築・中古・賃貸に代わる第4の選択肢の提供」を目指しています。日本には築年数が経った住宅をリフォームして住む風習はまだ浸透していません。従来の新築、中古、賃貸という3択だった日本の住環境において「品質が良く清潔に手入れされた空き家で、手ごろな価格」のカチタス物件という第4の選択肢を提供していき、空き家問題を解決しながら企業としてもさらに成長していきたいと考えています

##

講演後の質疑応答では、中古市場を活性化するための税制優遇や住宅を担保にする融資制度の可能性など多くの質問が出て活発な議論が行われた。さらに住み放題サービスの実現や近隣の高齢者数世帯を1軒に集約して一緒に住み、残りを販売して生活費にあてるなど、地方が抱える問題や地域の活性化も絡めた可能性についても意見が出された。


Scroll to top