「がんばらない働き方」の意味するもの――「忘れる」「捨てる」と、集中と

ピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、最小の人数で最大の結果を出すプロフェッショナルだ。2000年に来日し、モルガン・スタンレーを経て、Googleでは人材育成・組織戦略の統括部長を務めた。その経験を活かすべく独立し、未来創造事業のプロノイア・グループを設立した。誰もが自己実現できる社会をミッションに、組織の変革コンサルティングを推進している。第9回のゼロプラMeetUPでは、最新刊『がんばらない働き方』を上梓したグジバチ氏に、今のビジネスのトレンドから今後の見通し、さらには対処法まで、自在に語っていただいた。


Work 3.0がやってくる

グジバチ:まず皆さんを挑発したい。この質問の意味はご存じですか。

ARE YOU READY TO GET FIRED?

もしご存じでなければ、ご自宅に戻ったら中学校の英語の教科書を探してください。

日本の未来を考えれば、英語をビジネスの共通語にしないと危ない。シンガポールや香港、ドバイなどに行くと、ほとんどのビジネスは現地の言語ではなくて英語で行われているのです。それによってグローバル化のチャンスも増えるし、グローバルな人材が集まってきます。

僕が日本に来て長く働いてきたモルガン・スタンレーとGoogleの共通点を考えても、世界中のオフィスが同じ設備、同じ言語で、ほとんど英語が共通語になっています。また、グローバルでいかにスピードを出していくかを、すごく重視している会社です。今のビジネスでは、テクノロジーによる情報分析と直感を掛け合わせて、ひらめき・新しい価値を生み出すのが常識になっています。

働き方を考えると、生産経済であれば勤勉さと服従が求められていました。これがWork 1.0です。Work 2.0になるとナレッジエコノミーにつながり、知能や専門性が必要になってきます。ただ、さまざまなことが自動化できるようになり、AIで置き換えられることも増えてきた結果、勤勉さ、服従と知能、専門性が要らなくなってきているのです。

いま急成長している企業で求められているのは、率先、創造性、情熱です。クリエイティブエコノミー、Work 3.0の時代になっているのです。何を世界にもたらしたい、何を世界から得たいという認識を持っている従業員を雇って、彼らに新しい価値を生み出してもらうという考え方です。

時代遅れのやり方を忘れる

ここで、新しい企業の常識を考えていただきたい。今いちばん必要なことは、時代遅れのやり方を忘れることです。

今のマクロ経済や組織の変化を見ると、ものづくりはもう終わりです。プラットフォームに力を入れないと駄目です。

強欲の世界も終わりました。いかに平和な世界をつくって、利他主義で考えていくかが大切です。

自前主義、クローズド型の組織も終わりです。新しい企業の採用プロセスを見ると、マーケティングと変わらないのです。会社のビジョン、ミッションやプロダクト、商品や社員のクオリティによって、いい人を採用できるか採用できないかということになるし、コミュニティづくりにも力を入れないといけません。

役員がKPI(Key Performance Indicator)を決めるトップダウンの世界も終わって、ボトムアップです。特にミレニアル世代、若い方々が、夢を持ってやりたいことをOKR(Objectives and Key Results)でゴール設定するようにします。

ピラミッド型の組織も終わりです。ピラミッドは、お墓ですよね。ピラミッド型組織の企業は生き残れない可能性が高い。社畜優遇ではなく、いかにエンプロイーエクスペリエンスとしてスタッフによりよい体験を提供していくかが大事です。

マネジメントの考え方も変わって、計画主義も終わりです。走りながら考え学んでいく、学習主義が今の常識です。

マネジメントは、プレイングマネージャーで隣の部下と同じ仕事をするのではなくて、ポートフォリオに近いやり方になります。問題解決のために社内のリソースを使うのか、社外のリソースを使うのか、テクノロジーを使うか、人材を使うかは、マネージャー次第です。

マネジメントスタイルは、鵜飼いのようなものではなくて、羊飼いが放牧で羊を育てるようなものになっていきます。人を育む、よりよい職場をつくっていくようなかたちが、今の常識になってきています。

何のために活動するのか

皆さん、何のために活動しているのでしょうか。いま成長している企業は、顧客を受動的にしてしまうのではなくて、顧客とともに、いかに新しい価値を生み出していくかに取り組んでいます。この考え方は、政治でも使えると思います。いかに市民、国民とともに新しい価値を生み出していくか。工夫すれば、よりよい社会貢献ができると思います。

個人のミッション、ビジョンも考えて、幸せとはなんぞやということを考えていただきたい。僕は、簡単に言うとgive and takeのバランスなのではないかと思っています。自分が何を世界にもたらしたいか。それを通じて、何を世界から得たいか。これをしっかりと自分の中で認識していくことが大切です。それによって、自分が何を大切にしていくか、何を重視していくか、自分の価値観と信念などを軸にして自己開示する。それを周りの人たちに伝えていけば、自己表現ができるようになってきます。自分のアピールしたいことをしっかり伝えられれば、周りに支援者、協力者が増えていき、それで自己実現ができるのです。

自己実現ができると自己効力感が高まります。自信がつくということです。何をやりたい、何を得たいというのを決めて、それに向かって生活して、仕事して、やらなくてもいいことはやらなければ、すごく楽な働き方になる。何を捨てるかを、しっかり決めていく。「がんばらない働き方」とは、まさにこのことなのです。


ディスカッションでは、政治家のがんばりが逆効果になる例として、一方的な情報発信が挙がった。グジバチ氏はもっと会話になるようなコミュニケーションが必要と指摘し、日本の若者に対しても積極的なコミュニケーションを望んだ。
働き方と稼ぎ方の両立に悩んでいるという問いには、もう少し経営者に近い考え方を持ってほしいとの答えがあった。一般的な会社員にありがちな、いかにして最低の努力で最大の給料を得ていくかを考えるのではなく、最大のアウトプットを最低のコストで生み出すことを考える。そのための選択と集中の重要性が語られた。

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