原石を磨いて光らせるためのEdTech ――「マニュアル」から「鍛錬」へ

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若手の秘書が育たない、学生インターンの教育が大変……そんなとき新人教育に活用できるのが、EdTechアプリ「TANREN」だ。社内教育、営業プレゼンの練習、良い接客事例の共有などが、スマホ一つでできるという。

2019年最初のゼロプラMeetUPはTANREN株式会社の創業者である佐藤勝彦氏をお招きした。元調理師という一風変わった経歴も持つ佐藤氏に、新たなオンライン研修から鍛錬のコツまで、デモンストレーションも交えてご紹介いただいた。


「アナログでインプット」の限界から

佐藤:携帯ショップ販売員の育成を、20年超にわたってやってきました。集合研修のために、全国のショップを回ります。会場には40~50人が集まり、研修に求めるものが人によって異なります。通り一遍の話しかできないので、ラストワンマイルに釘が刺せない。限界を感じていました。

集合研修は、アナログでインプット主体です。本来、営業接客の現場では、覚えたことをどう生かすかという、現場でのアウトプット力が求められます。そのため、日々どういうふうに覚えたことを活用しているのかをチェックしに現地現場まで赴き、OJTをしていました。しかし、北は北海道、南は九州・沖縄のショップまで全店行こうとすると、私一人では無理です。これはデジタルツールを活用するしかないと考えたところ、インプット型の一方通行で教育をするeラーニングはあっても、アウトプット型のOJTをクラウド化するツールがなかった。その課題に対して取り組んだものが、「ナレッジシェアアプリ TANREN」です。一言で内容を表すと、「動画版赤ペン先生」です。

「やってみせ」「させてみせ」をデジタルに落とし込む

マニュアル上で表記されているものは形式知です。営業のカリスマと言われている人たちには、マニュアルに置き換えにくいノウハウがあります。それが営業暗黙知です。我々のソリューションはその暗黙知を見つけます。本部の人が出てこなくでも、現場に答えはあるのです。それを動画で見ると、いろいろと気づくことができます。せっかくスマホで動画が撮れて送り合える環境があるのに、使わないのはもったいない。SNSネイティブな人たち、YouTubeを見て育った人たちは、簡単にできます。

ここで私が大事にしているメソッドは、山本五十六のロジックです。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

やってみせて、させてみせて、ほめてあげるのです。今の草食系の人たちは、ほめてあげないと動きません。

まずは、見本動画を見せます。そしてやってみた動画を投稿してもらいます。それを一つ二つほめてあげてから、改善点を言います。それを見たら、次の改善提案。PDCAサイクルを回します。これをスマホ一つでできるようにしたことが、ポイントです。

マイクロラーニングにする

もともとアナログのセールスメソッドはAIDMAの法則という購買心理を基にして、入り口のトーク、中間のトーク、クロージングのトークと段階があり、それぞれの段階でお客さまと波長を合わせるのに適したスキルがあります。このときに注意していただきたいのは、それぞれの段階にかけている時間は5~10分ぐらいなのです。一連の営業の接客を全部流すと30分程度になります。ところが30分でクロージングを終わらせなさいと新人研修で指導したにもかかわらず、1時間や2時間もしゃべり倒す人がいます。話が整理されていないのです。本当に純粋無垢に商品を欲しいと思う瞬間は、琴線に触れた5分間のトークだったりします。

我々の教育ツールはマイクロラーニング方式で、長くて10分という小さな単位で動画を構成しています。目指せ5分で、最適なのは、人が飽きずに見られる時間と言われる3分半です。

ブレンデッドラーニングで自立自走の学びへ

いまなお、アナログも大事です。そもそも練習風景を撮って送るのはデジタルですが、やっている様子そのものはアナログなのです。究極の鍛錬はブレンデッドラーニング、アナログとデジタルの両立だと思っています。

TANRENというデジタルの部分で先に講習をします。そして動画をアップロードしていただいて、またTANRENでフォローをする。今まではアナログの対面講習が先でしたが、デジタルから先に学んで知識を覚えると、一人一人に合った動画を見ることができるために効率がよく、応用も利きやすい。評価点はスキルごとに付き、ランキングでゲーム性も取り入れていますので、現場は非常にアクティブに動き出すのです。このように主体性が担保できている点も、重要になります。

TANRENの基本モデルはピラミッド型で本部から指示がなされるのですが、現地現場が物事を理解し始めると、メッシュ型と言われる、自立自走の動きに変わっていきます。半年から1年ぐらいでメッシュ型になってきます。そうすると本部が言わずとも現場がアクティブに学ぶようになり、数字も上がっていきますので、経営が健全になっていくのです。その状態になるようにするために、我々も伴走支援しています。


ここで実際に参加者もスマホを使い、TANRENのデモンストレーションが行われた。どんな利用法が考えられるかなどのディスカッションもあるなか、撮影して投稿するサンプルとして佐藤氏がTANRENのビジョンを語り、講演をまとめた。


原石を磨き、鍛錬するために

佐藤:私が大事にしているのは、どなたでも原石は磨けば光るということです。

オバマ前大統領は、スピーチのある前夜に3回は練習すると言っていました。本当にすごい政治の達人たちは、感情を動かすスキルを持っています。思わず前のめりになってしまいます。

新人は日々どうすればスピーチが上達するのかと、政治家を目指している元部下に聞いてみたら、「簡単ですよ。数をこなすことです」。実際に彼が寒い街頭に立って深々とお辞儀をしている姿を見て、これぞ鍛錬の鏡と思いました。

鍛錬するということは、日本人は昔からキーワードとして持っているし、聞いたこともあると思います。でも、どうでしょう、皆さん。鍛錬できますかと言われたら、苦手ですという話になると思います。そこで、鍛錬するコツは何だろうということを皆さんに持ち帰っていただきたいのです。

もし皆さんに持続力がなく、すぐ途中であきらめるようなことがあるならば、何のためにやっているんだろうと、目的を考えてみてください。それは、ぶれることのない夢なのです。

たとえば元部下は、政治家になるのが夢かといったら、違うのです。ICTで日本に革命を起こすのが夢なのです。そのための手段として、世の中を変えるには政治家しかない、だから政治家になろう。これは目標なのです。もし彼が政治家になって物事を変えられなかったら、手段を変えるという話なのです。もしかしたら起業するかもしれません。

企業教育も一緒なのです。何のために今日この場で皆さんが集まっているのですか。これは何を達成するためにやっているのですか。テーマは何で、誰に向けて、どういうことを決める会なのですか。私がシステムの話より大事にするのは、これらのことなのです。

鍛錬のコツは、実は簡単なのです。目的を明確に決めて、何を達成するかの目標意識を設定する。これをしてもらえれば誰でも鍛錬できるようになるので、ぜひ安心して取り組んでいただければと思います。

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