自己紹介、名刺交換禁止! 言いっぱなしで結論は出さない! 「まちの教育委員会」

肩書も経歴も関係ない、結論を出さないワークショップから生まれるモヤモヤを楽しむ「まちの教育委員会」の第一回が2019年1月15日に開催された。
本会には、タイトルに惹かれて参加した人や、教育に関する自身の意見を発信する場がほしいと思い参加した人、Facebookで流れてきて「何か面白そう、とりあえず行ってみよう」と参加した人など、小学生からシニア世代まで総勢32名が参加した。とにかく会話に重点を置いた、ナレッジの吐き出しとシェアの場がまちの教育委員会である。
主催は、EdTechの第一人者であるデジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授と、その門下生でもありゼロプラMeetup を運営している高山智司氏だ。

佐藤昌宏教授
高山智司氏

*佐藤昌宏教授にご登壇いただいた回のゼロプラMeetupレポート
EdTechで起こす教育のイノベーション

 

*高山智司氏とEdTechの出会いについて語られている記事(外部サイト)
日本の教育を変える “EdTech(エドテック)” ~元・衆議院議員が挑戦する教育業界のデジタルトランスフォーメーション~


教育から学びへ Learning over education

まちの教育委員会の開催への流れを語るには、「EdTech」について話しておく必要がある。
EdTechは2009年~2010年くらいからアメリカで出てきた言葉である。佐藤教授は、この言葉と出合ったとき「eラーニングではなく、これからはEdTechだ」と思ったという。eラーニングとEdTechの違いは、インターネットを利用して学ぶか、インターネットを含めたテクノロジーの進化を背景に学びの方法に変革が起きるかである。学びの一手段であるeラーニングと、eラーニングも含めて学び方自体に大きな変化をもたらすテクノロジーを総称するEdTechでは大きな違いがあるのだ。そして今、テクノロジーの進化と教育の変革が急スピードで起きているのである。
テクノロジーが進化し、それらを活用することが当たり前になると、教育・学びの主語が変わると佐藤教授は言う。教育の主語は教える側にあり、学びの主語は教わる側にある。100年変わらなかった教育システムがこの十数年で大きく変わりはじめている。「教育を受ける」のではなく「学びたいことを自ら学ぶ」という、受け身の教育から主体的な学びへと目線が変化してきているのだ。
具体的には、テクノロジーが入ってくると個別最適化が可能になるとされている。コンピューターで学んだものはインターネット上にログが残るので、目的や興味、進度による個に合わせた学びが実現可能だ。また、学んだことを可視化できるので再現性が高まることも利点の一つだ。

テクノロジーは、今後の教育においても切り離すことができない。そんな背景も含めて、佐藤教授は今回の会への思いを語る。「今回のセッションを大いに楽しんで、たくさん話してほしい。今日のような、言いっぱなしで、とりまとめもせず、とにかく会話をすることで、大きな教育の変化、革新、イノベーションのコミュニティが形成されると確信しており、ここに集まったみなさんにもその一員になってほしい 」

全員が言いっぱなし、全員が良い聞き役

まちの教育委員会は「ファイヤーサイド・チャット」がアイデアの基になっている。ファイヤーサイド・チャットとは、フランクリン・ルーズベルト大統領が実施したラジオ演説で、暖炉を囲みとりとめない会話をするかたちで民衆に語り掛け、民衆を動かしたというものだ。このファイヤーサイド・チャットのように、カジュアルに話をすることが一番のポイントだ。そのため、所属や肩書から伝える自己紹介や名刺交換を禁止し、立場や年齢を超えて、一人の人間としてそのテーマに向き合い、意見交換を行う。
また、全員が話をできるように1チームの編成を3~5名と少人数にすることも重要である。人の話を取ったり、独壇場にならないよう心掛け、全員が良い聞き役になり、全員が安心して話せる場を構築するのだ。

予定調和は一切なしのトークセッション

この会の面白さは、その流動性にある。枠組みとルールは設定してあるが、当日話すテーマやチームはその場で決めるのだ。一度絞ったテーマも、次のセッションではその場の様子を見て、増やしたり減らしたりしながら変わっていく。その場にいる人が話したいこと、話しやすいことに合わせて、設定テーマが変わるのだ。あくまで会話が主体で、話したいことを話すことを目的としているまちの教育委員会ならではのやり方だ。

 

 

 

 

セッション開始時に高山氏は大きな声でこう言った。「自己紹介禁止!まずは握手を交わして、『なぜこのテーマを選んだのか』『私はどのようにこのテーマに関わっていくのか』を話しましょう。みなさん、それぞれ良い聞き役になってくださいね。では、スタートです!」

参加者は、臆することなく握手してからトークを開始した。戸惑っているチームが一つ もなく、会場は大いに盛り上がる。笑い声が上がるチームもあり、その場にいた誰もが自由な空気を楽しんでいる様子だ。
セッションの最後は同じチームで握手を交わして終了。次のテーマへうつる。この時、テーマが細分化したり、あまり人が集まらないものは減らしたりしながら、回を重ねるごとにトークテーマの数が増えていった。
計3回のセッションを終え、まとめのない、結論のないまちの教育委員会は終了した。

取り上げられたテーマ
<1回目>
・テクノロジー
・学校
・STEAM教育/プログラミング
・アクティブラーニング
<2回目>
・テクノロジー
・小/中学校
・高校/大学
・リカレント/キャリア教育
・STEAM教育/プログラミング
・親/保護者
・英語
<3回目>
・受験
・まちの教育委員会(私はもっとうまくやりたい)
・小/中学校
・高校/大学
・リカレント/キャリア教育
・STEAM/プログラミング教育
・アクティブラーニング
・親/保護者

 

自己紹介と名刺交換が解禁されたセッション終了後、興奮冷めやらぬ参加者による、トークセッションの続きかと思えるようなディスカッションが、そこかしこで行われていた。

参加者からは以下のコメントが聞かれた。

「自己紹介しないのがおもしろい」
「大人の人と同じテーマで話せるのがすごく楽しかった」
「バーッと自分の思っていることを話せてスッキリした」
「いろいろな人の考えが刺激になった」
「これまで『テクノロジー』『教育』について話し合う場がなかった。自分の住んでいる街でもやりたい」

 


まちの教育委員会がもたらすものとは

まちの教育委員会では、結論を出さない。その場に参加している人それぞれが、何かを感じて、何かを得て、何かを発見して持ち帰る。持ち帰るものは、決められたものである必要はなく、個々の尺度、背景、環境によるものだ。
「個別最適化」された課題を自ら問い、見つけ、持ち帰る。あるいは、「もやもや」が残り、引き続き問い、学び続ける人もいるだろう。ひらめきを得て、各々の環境で広げ 、実行していく人もいるだろう。
ゴールが決まっていてそこに導く「教育」ではなく、参加者が主体となり次につながる学びの場となった、まちの教育委員会。立場も年齢も気にせず、カジュアルに話し合いのできる学びの場の実現で、教育イノベーションを起こす人材がそこここに存在する社会が生まれるのではないだろうか 。まちの教育委員会は、各地で教育イノベーションを起こす人のハブ(拠点)になるのだ。

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