「共創」のコミュニティでイベントを、そして世の中を面白くする

街頭演説や国政報告会、後援会パーティー……どうも政治のイベントは面白くない。では、どうすれば面白くなる? 「NHKディレクソン」に「ナース酒場」、さらには企業と顧客をつなぐさまざまなイベントを仕掛けるコミュニティ・アクセラレーター、東急グループのイッツ・コミュニケーションズが運営する渋谷のイベントハウス型飲食店・東京カルチャーカルチャーの河原あずさんと、コミュニティマーケティングの勉強会も主催するPeatix共同創業者の藤田祐司さんを迎え、面白いイベントはどうすれば作れるのか、その基盤とその先にあるものまで、絶妙なコンビネーションで縦横無尽に語っていただいた。


イベント企画の三大パターン
1.一緒に作る

河原:今日いただいたお題が、「政治イベントがつまらない」。別にそうは思っていないのですが、そもそも面白いとはなんだというのを、私と藤田さんとでいろいろ話しました。
まず、僕がイベントを企画するときの三大パターンがあります。一緒に作る。たくさん集める。フォーマットとテーマの掛け算。この三つについて、事例を交えてご紹介します。
「一緒に作る」例として、プロモソンがあります。「NHKディレクソン」では、地域の住人とNHKの地方支局の方が一緒に全国放送のテレビ番組を作る、公開企画会議的なイベントをやっています。これをやることで、圧倒的にNHKと参加者の結び付きが高まる。自分たちの作った企画が実際に番組になって全国に流れ、自分が映るとうれしい。正直なお客さんの気持ちだと思います。
他にも「お~いお茶」とのアイデアソンである「茶ッカソン」や、焼酎とのアイデアソンである「いいちこらぼ」など、自分が関わるとか、自分の意見がプロダクトなり企業の活動に反映されることが、消費者や企業がリーチする方々にとってものすごい喜びに変わる。これをエンターテインメント化したのが、プロモソンと呼んでいるフォーマットです。

藤田:僕も「いいちこらぼ」は審査員としても参加者としても参加しているのですが、ひとたび参加するとやはりいいちこを飲むようになりますし、ものすごく好きになる巻き込み力がある。コミュニティを作っていくうえで、すごく強いフォーマットになっています。

河原:しかも嫌らしくなく、企業のPRができる。自然といいちこに目が行ったり、自然に「お~いお茶」に目が行ったりします。企業の人が実際にお客さんと共同作業をして接しますので、お客さんがどういうことを考えているかがダイレクトに伝わる効果もあります。

2.たくさん集める

河原:次に「たくさん集める」です。
僕のイベント作りの法則として、一人一人のプレイヤーは小さくても、ギュッとたくさん集めると一気に面白くなるというものがあります。たとえば皆さん、ナースの人たちが同時に40人いる空間って想像できますか。あるいは保育士さんが40人集まっているイベントって想像できますか。これが皆さんの頭の中で、なんかよく分からないけど面白いことが起きそうな気がするという好奇心を呼ぶ。
しかも、ほぼ同じ建て付けでナースも保育士もやっているのですが、まったくイベントの空気が変わるのです。ナースのイベントにはナースの方々のパーソナリティが反映されるし、保育士さんのイベントは非常にホスピタリティあふれる、柔らかい空気の場所を保育士さんが作り出す。占い師は占い師でまた面白い。渋谷のコミュニティのキーマンを集めているイベントは、非常に活気のある場になっている。
そんな感じで、とにかくいっぱい似たような属性の人を集めてみるのは、企画を面白くするコツとしてあります。

藤田:集客的にもすごくよい。たとえば登壇者が30人ぐらいいると、それぞれの方が皆さん告知してくださるので、さらにその先の人たちに活動が伝わっていきます。

河原:一人が3人呼んだら100人ぐらい来ますからね。

3.フォーマット×テーマ

河原:そして最近凝っている手法ですが、テレビ番組やエンターテインメントイベントでよく見受けられるフォーマットと、あるテーマを掛け算してみる。
たとえば、AbemaTVでやっている「フリースタイルダンジョン」という番組があります。チャレンジャーとモンスター(プロのラッパー)がフリースタイル(即興)ラップを披露して、その巧拙で審査員が勝者を決めるという、非常にシンプルなフォーマットです。これを手打ちうどんに応用して、技を競おうというのが「TEUCHI」というイベントです。うどん界の格闘技と呼んでいます。同じように、ビジネスプレゼンテーションにも応用できると思ってやったのが、「フリースタイルプレゼンバトル」です。その場で与えられたお題について、10分間でPowerPointなどの資料を作り、3分間のプレゼンテーションをその場でやってもらって、面白さを競います。短い時間で1対1の対決をして、審査をして、トーナメントにする。そのフォーマットをいろいろなジャンルに展開していく。これが意外性のある組み合わせであればあるほど面白くなるという作り方です。

藤田:このフォーマットで、本来は堅いテーマなものを面白くやっている、「移住ドラフト会議」というイベントがあります。移住してきてほしい自治体の方たちがいわゆる球団としていらっしゃる。実際に移住してもいいという、面白い活動をされている方々が選手として登録している。それぞれの自治体が自分たちの所に来てほしい方を1位から3位まで指名して獲っていく。実際にくじ引きをして、本物のドラフト会議のように決めていく。結果、ここで選ばれた方は本当に移住をする流れになります。面白さを入れたことによってメディアでも非常に多く取り上げられ、世の中に伝えていくことに成功しました。

イベントを継続して、コミュニティにしていくために

河原:ここまでは企画を立てるうえでの演出やフォーマットの話で、そうやって面白さを演出することは、ある種のパターンに則ればできるのです。
ただ、面白さの本質とは何なのか。藤田さんと話していて思ったのは、コミュニティがけっこう重要なのではないかということ。イベントは一発花火ではないかと揶揄されることもあるのですが、重要なのは一発の花火で終わらせないで、それを継続していくことにより、世の中に対してインパクトを与えていくことです。

藤田:企業のケースで言うと、大型のカンファレンスを年1回やるパターンがあります。主催者側は終わった瞬間の満足度がものすごく高いので、担当者も含めて成果が上がったような気持ちになるのですが、実は参加された方たちは、たとえば登壇者の話を聞きに来ただけで、その企業のプロダクトを導入しているわけでもなければ、そんなにフックもかからず、企業のファンになっていないことが非常に多い。大型のイベントを1年に1回やることでは悪いことではないのですが、残りの364日でファンになってほしい人とどういうふうに接するか。その継続性を持たせるために、たとえば小型のイベントをやる。そして、そのテーマ設定がすごく大事。毎回1個のテーマを決めるのに、何回も何時間もかけてミーティングをして決めています。
あずさんも毎回深く練って作っていますが、どういうふうにテーマを決めていますか。

河原:僕の場合、わりと人ありきでイベントのテーマを決めることが多い。いろいろな人と会うので、世の中のトレンドみたいなものが、こういうものが来ているなみたいな感じが勘所としてあるのです。その次に、その人の魅力を引き出すためにはどうしたらいいかと企画を立てることが多い。むちゃくちゃ面白い人がいたら、その人の魅力をむちゃくちゃ面白く伝えれば、自然といい場作りができるので。

藤田:人が基点という感じですね。人が基点になるケースと、テーマが基点になって誰がいいかと考えるのと、どちらもありかなと思います。
人数については、熱量が伝わるのはだいたい30~50人ぐらいではないかと思います。イベントをやるときはお金もかかるので、せっかくやるのならいっぱい集めないともったいないと考えがちですが、継続したイベントを作るというテーマを考えたときに、一人一人にしっかりとフックがかかる人数というと、これぐらいがいい。そういう小さな集まりをやりながら、ときどき大きく、数百人集めてイベントをやる。そういうかたちが、コミュニティ形成としてはいちばんよいのではないかと思いますね。

河原:呼ばない勇気って、大事なんですよね。あえて定員を切って、少数に絞って、その場の熱気を作る。

藤田:アンケートを取っても、参加者の満足度がいちばん高いのは30~50人ぐらいで開催したときです。
「マルサン・コミュニティの法則」は、あずさんがブログで書いている法則です。新しい人、常連さん、毎回来るコアな人を、3分の1ずつで配置する。たとえば30人のイベントであれば、初めて来た人が10人ぐらいいて、常連と呼ばれるような2~3回に1回来てくれる人たちが10人ぐらいいて、毎回来るコミットが高い人たちが10人ぐらいになったときに、コミュニティとしては新陳代謝も起きていて、いい状況になります。初めて来た人たちに常連さんやコアな人たちが引き込んでくれる。初めて来た人たちの中から数人は常連になり、そのうちコアとなっていく。
世の中では、コアな人と常連さんだけで何回もイベントをやってしまうケースが多い。そうするとそのイベントコミュニティは疲れてきて、なんとなく活動停止するのです。なので、内輪の集まりにしない。テーマを散らすと毎回興味を持つ方が変わってくるので、新しい人が来やすくなる。後はイベントごとにレポートを書いて、それを拡散しておく。それを見た、今まで来たことがなかった方が次回に行こうかなと考えてくれる。そういったところで新規の参加者を獲得して、3分の1の新しい人を入れるようにしています。また、他の主催者さんとの共催を多く取り入れるようにしています。我々で言うと、東京カルチャーカルチャーさんともいろいろなイベントでご一緒しています。関西大学さんや住友商事さん、ネイキッドさんとやったり、神戸の行政がやっている「078」という大型のカンファレンスとコラボレーションすることで、Peatixのコミュニティに新しい人たちに入っていただいています。

河原:面白さというのは、表面的な、企画的な面白さ、斬新性も必要なのですが、この場に来たことによって新しいつながりが生まれるとか、何か変化があるとか、終わった後に何かしらの行動変容が起きることが本質だと思います。人の行動変容を手っ取り早く促す方法は、新しい人との出会いなのです。そこの出会いをいかに創出していくかが、僕や藤田さんがやっている取り組みのコアの部分と思っています。

藤田:新しい出会いがいちばんある場がイベントだと考えて、そのつながりを大事にしています。

行政・NPO・企業などによる「共創」

河原:我々が拠点にしているのが渋谷なので、渋谷での活動が非常に多い。渋谷はいま長谷部区長を中心に東急電鉄やさまざまなNPOなどがいい感じに重なり合って、行政と組み、区外から来る利害関係者との交流が生まれています。

藤田:「渋谷をつなげる30人」というプロジェクトが3期目になります。最近は大手企業も参加するようになり、話題にもなっています。行政と企業、民間がうまくタッグを組んで、さらに周りの企業をうまく巻き込んでいます。また、S-SAP(エス・サップ)と呼ばれる動きがあります。これも長谷部さんがやっている、渋谷を応援する企業体をどんどん集めて巻き込むもので、十数社が登録しています。渋谷を盛り上げるために企業が自分たちのリソースを貸している。行政が主体で企業に絡んでもらう、大きな動きが出ています。

河原:後は、一般社団法人渋谷未来デザインを渋谷区、東急電鉄、ロフトワークなど、さまざまな関係プレイヤーの共同で作っています。そういったところから、プラットフォームをプレイヤーと一緒に作って、民間と行政が一体となって施策を展開していく動きが生まれ始めています。渋谷区観光協会もすごくコミットしてきますし、つながりの作り方が非常にうまい印象があります。

藤田:今まで我々は渋谷区の行政の方とまったく接点がなかったのですが、最近、我々がやっている「コミュコレ!」というイベントには、毎回渋谷区の副区長が登壇されています。積極的に民間側と接点を持つ動きが、渋谷はすごく強くなっています。

河原:よく企業などで、「競争」から「共創」へと言われています。渋谷区の事例も共創の大きな事例として取り上げられています。世の中の不確実性、不確定性がどんどん高まっていて、既存のやり方がうまくいかなくなる時代になってきます。そうしたなかで、ある種の多様性に対する感覚を持ちながら、いろいろな人たちの意見を取り入れたり、いろいろな人たちと一緒に何かを築き上げていくプロセスを経ていくことが重要と考えています。
いろいろな価値観が共存する環境の中に身を置ければ、大きな外的環境の変化が起きても、生態系としては生き残るという現象が起きます。企業だとオープンイノベーションと呼ばれる理論で語られているのですが、行政や公的な取り組みに関しても同様のことが言えると思います。そこの根っこにあるのはコミュニティだと我々は考えています。いろいろな人たちが生き生きと意見交換できて、フラットに、対等に、オープンなコミュニケーションができる。そこのコミュニケーションから新しいものを創発していくサイクルを築き上げていくことが、世の中を面白くするいちばんいい方法と思っています。
イベントは、あくまでそれを実現するための手段であるというところをしっかりと押さえて活動していくことが、リアルなコミュニティと自分たちが思っている世の中にこういうインパクトを与えたいという思いをつなげるキーになるのではないかと考えています。

目的を考え抜く

藤田:イベントやコミュニティの在り方、主催者の動き方もすごく変わってきています。この動きのきっかけは、やはり東日本大震災だったと思います。2011年に我々がサービスの準備をしていた時点では、想定していたのは音楽イベントやフェスなどのイベントに使っていただくことだったのですが、蓋を開けてみると、ちょうどそのタイミングでソーシャルメディアが台頭し、コミュニケーションの手段が生まれ、いろいろな方たちが自分で活動するようになった。FacebookやTwitterが一気に広がっていったのもその時期です。結果、Peatixとしては、震災復興の集まりやNPOの活動を支援するところから始まって、コミュニティ性が高いもの、草の根運動を応援してきました。その頃から共創の動きは出ていて、特にここ2年ぐらい、その動きが強くなっています。

河原:僕らが最初にイベントを始めた2008年ぐらいと比べると、参画する企業の数が圧倒的に増えた。企業がファンコミュニティにどんどん取り組むようになってきている。マスマーケティングだとコンシューマーに伝わらなくなっているのです。エンゲージメントを作るソリューションとして、Meetupと言われるコミュニティ型のイベントに注目しているというのが、この数年のトレンドかなと思います。

藤田:目的は何なのかということがすごく大事です。イベントをすることが目的になると、面白くないものになるのは間違いない。何のためにやるか、誰のためにやるのか、届けたい人たちに何を届けるかということを考え抜くと、基本的にはつまらないイベントにはならないのではないかと思います。

河原:面白さの源泉は、参加する人の熱量です。オーガナイザーもそうだし、来る人もそうです。その熱量がシンクロする場所を作ることが、生きたつながりを作る。その生きたつながりが、それぞれの行動を変えることにつながっていく。イベントの企画は毎回変わるけど、その場所に行ったら何か新しい発見がきっとあるよねという期待感が芽生え出すと、新しいものが生まれてくるのかなと思っています。


ディスカッションの時間では、イベントをすること自体が目的になっていたとの反省があった。どうしたら熱量のある人を集められるのかとの質問には、藤田氏はテーマの大切さを語り、河原氏は、熱量のある人を連れてくるのは熱量のある人で、外の熱量ある人を引っ張り込む循環ができることがポイントと述べた。特に政治では若い人が集まらないとの悩みには、若い人を集めるのではなく、若い人たちが集まる場に行くのが効果的との指摘があった。
参加された方々が行動変容を起こして行動することを期待する意見が出たところで、閉会となった。

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