「ゼロプラMeetUP!」の第2回が11月14日に開催された。今回は「コミュニティ」をテーマに、ONE JAPAN発起人の濱松誠氏と大辻聡史氏がゲストスピーカーとして登場。パナソニック、富士ゼロックス、NTTグループをはじめ、名だたる大企業50社から1700人が参加しボトムアップ革命を起こしているコミュニティはどのようにして生まれ、どこへ向かっていくのか、お話を伺った。
まずは社内でやれることから
濱松:ONE JAPANは大企業の若手有志団体のコミュニティです。そもそもはOne Panasonicなど、各企業の社内でがんばっている人たちの集まりがあり、その集合体としてONE JAPANがあります。なので、まずパナソニックの話をして、それからONE JAPANの取り組みをお話しします。
パナソニックはグローバルで約27万人の社員がいます。パナソニックだけでなく、多くの大企業が抱えている深刻な病が二つあります。一つが、組織の縦割りによる蛸壺化・サイロ化。全体最適を考えずに部分最適に陥ってしまいます。もう一つが、どうせ言っても無駄症候群。若い人が社長に何か言ってもどうしても声が届かないとか、私たちが言っていることはなかなかミドルが認めてくれないとか、組織が大きすぎるがゆえにあきらめてしまう。これをどうにかしたいと思って、まずは社内でOne Panasonicというコミュニティを作って、横串を通して人をつなげまくった。コミュニティに社長を呼んだり、管理職やOB/OGなどの卒業生を囲んで話をしたりと、自分たちができることをひたすらやり続けました。
歩一会からOne Panasonicへ
大企業の強みは、人材、技術、ブランド、歴史、信頼、お金、経営基盤と、有形・無形の資産(リソース)を豊富に持っていることだと考えます。しかしそれは、人と人とがつながらないと、強みとして生かせないのではないか。なので、社内と社外をつなぐハブになりました。社会資本こそが大事なのだと、企業内でも感じています。こうした活動を続けると、個人はモチベーションが向上し、組織は面白い人がどこにいるのか分かるとか、採用力が向上するなど、関係の質が良化していきます。
実は、松下幸之助が100年前に「歩一会」という社員が親睦を深める会をやっていたのです。多様な価値観はあるけれども、全員が歩みを一つにする、まさにOne Panasonicが目指していることそのものでした。経営者から若手社員まで、組合員・非組合員などといった壁のないものを、創業者である松下幸之助は作りたかったのではないかと思っています。
One PanasonicからONE JAPANへ
One Panasonicの活動をFacebook等で発信していたところ、同じような思いや志を持つ他社の20代、30代の人に出会えました。そうした出会いもあり、2016年9月にONE JAPANという大企業若手・中堅有志のコミュニティを発足しました。発起人はパナソニックの私と富士ゼロックスとNTT東日本のメンバーです。
特徴としては、良くも悪くも大企業であること。年齢は本来関係ないのですが、20~30代で思いを持って実践する若手・中堅。それから個人ではなくて、有志の団体。一人で異業種交流会に参加する人を何人も見かけましたが、結局その人が勉強して帰っていっても、勉強はいいから仕事しておけと言われてあきらめてしまったり、会社に染まってしまったりするので、社内のコミュニティ丸ごとで参加する。社内コミュニティのメンバーが仲間にいることで、染まらず、あきらめずに活動を続けられます。
ミレニアル世代による共創と意識調査
アクションとして、二つやっています。一つは、共創、オープンイノベーション。もう一つは、意識調査・提言です。
共創については、富士通と三越伊勢丹の事例があります。両社のONE JAPANメンバーがコラボレーションして、「CARITE(カリテ)」というサービスを今年8月にローンチしました。
意識調査については、ONE JAPANで兼業・副業などの調査を取ってみようと、自前で1600人の声を集めました。現在、副業・兼業をやっている人は6%ぐらいです。興味があるのは、75%ぐらい。そして、なぜ副業・兼業をしたいと思うのか。たとえばアンケート会社の意識調査では、金銭的報酬が欲しいという声がトップにくることが多いのですが、ONE JAPANの声は、金銭的報酬ではなくて、キャリアアップやスキルアップを望んでいたのです。仕事をやる意味付け、動機付け、目的みたいなものを、ミレニアル世代は求めていると分かります。
経営者やミドルマネジメント層はこの非金銭的報酬に敏感になる必要があり、彼らに学習の場を与えることこそが人材育成になるのを認識することが必要です。そうでなければ優秀な若手人材がベンチャーに行ってしまう、起業してしまう、外資系企業に行ってしまう。転職や起業自体は否定するものではなく、むしろ個人的には積極的に推奨する派なのですが、でもネガティブな理由で辞めてしまうのはもったいないよねということを、人事も含めて認識しないといけないと思います。
こうしたミレニアル世代の声や実例集として、『仕事はもっと楽しくできる』という書籍を出しました。最近の大企業の若手ビジネスパーソンが何を考えているのか、50社の声を集めました。
ポスト平成の組織と個人を考える
ポスト平成の時代に、組織の在り方としては、ミッション、信念、価値、目的、許容(受容)、誠実、選択肢といったことが求められます。会社と個人は主従関係ではなく、対等関係。個人の在り方としては、我々若手社員も文句ばかり言っているのではなくて、何のために働いているのか、何のために生きているのか、改めて考えないといけないのではないか。最近は利他の精神、ギブ・アンド・ギブをせよということが求められているのではないか。個人的には、邪悪でさえなければ何をしてもいいと思っています。誠実、プロフェッショナル、オリジナリティが求められているのではないかと考えています。
少し乱暴かもしれませんが、20~30代は、終身雇用が幻想だと分かっています。そもそも60歳で会社を辞めなさいという時点で、終身雇用ではない。なので、私たちが大事にしているのは終身雇用ではなくて、「終身信頼」。辞めたとしても決して「裏切り者」ではなくて、何かまた一緒に仕事をやろうと言われる関係を作れるか。むしろ、5年後でも10年後でもいいから帰ってきてくれと言えるか。その一言だけで十分なのです。
濱松氏の発表の後、大辻氏の話も交え、参加者全員でディスカッションが行われた。ONE JAPANに集まっている若者は、長い目で見たときに、中国やアメリカが変化していくなかで日本がどうあって、自分たちの愛している国をどうしていくのかというところまで考えて、どう協力できるかという部分が根底にあるので、大変なことやうまいくいかないことがあっても、結局協力し合わないと出したい力が出せないという共通理解があるという。
また、年に一度、約1000人が集まるカンファレンスを開催し、月に一度、各社の代表50人がオフラインで集まることもONE JAPANの強みを生み出している。顔が見えるからこそ話せることがあり、熱量が伝わるから相手にも伝わることがある。オフラインとオンラインのバランスをうまく使い分けている。
ONE JAPANの思いとしては、これからコミュニティが大事になっていく、熱量が人を動かすという思いがあると、濱松氏は言う。さらに、若者だけではがんばってもどうしても無理なところがあるので、リーダーになる人たちに対して、トップこそがリスクを取ってほしいと希望した。
参加者からは、地域の世話役がものすごく少なくなっていて、しかも高齢化している問題が挙げられた。地域が元気になるように、若い人が仕事場だけでなく、自分たちが暮らしているコミュニティに入っていって、ネットワークや知恵を出してほしいとの声があった。また、それが新たなビジネスのシーズにもつながるのではないかという意見も出た。最後はONE JAPANスタイルの記念撮影で、笑顔あふれる閉会となった。