「住所」を多拠点・定額制に ADDressが目指す「住まう」のアップデート 株式会社アドレス 佐別当隆志社長

会社にも行く必要がなく、PC一つあれば仕事も生活も困らない時代。アドレスホッパーと呼ばれる自宅を持たないライフスタイルの人たちが、都会を中心に出現し始めている。そんな中で登場したサービスが「ADDress(アドレス)」。サービス名は「住所」を「ADD(追加)できる」という意味で、全国・住み放題・定額制がセールスポイントとなっており、運営会社の社名にもなっている。

その特長は1カ月4万円という安さ、これを維持するためにどんな仕掛けがあるのか、今回は運営する株式会社アドレスの佐別当隆志社長が、この画期的なサービスを解説した。


「住まい」をアップデート

今日は、当社が取り組んでいる「ADDress」という「多拠点住み放題」のサービスを紹介します。

「ADDress 」は2018年12月20日に発表し、今年4月1日から実際の事業をスタートしようとしています。

「アドレス」というのは、いわゆる住所のことですが、サービス名の「ADDress」は、住所をどんどん追加(ADD)していくという意味で、1人1住所ではなく、1人複数住所を持てる社会を目指しています。

このためサービスと会社名を「ADDress」としました。

なぜこのようなサービスを考案したかと言いますと、インターネットやスマートフォン、SNSの登場で、働く場所、情報発信の場所はどこでもよくなりました。職場に関しても「WeWork(ウィワーク)」のようなシェアオフィスも出てきて「もう会社に行かなくても、いいんじゃないか」と思うようになりました。

一方、住まいに関しては、職場のようなアップデートはまったくされておらず、住宅ローンやマイホーム、賃貸マンションなどに縛られています。この「住まいをアップデートできたらな」というところから「ADDress」の事業は始まりました。

身一つ、月4万円

目指していくのは「クラウド版“住まい”」。つまり住所という一つの縛られた居場所からの解放です。当社で提供するのは「定額制で全国どこでも住み放題」そして「多拠点コリビング(co-living)サービス」というものです。

コリビングというのは、働く場所と住む場所をみんなでシェアする「シェアハウス+シェアオフィス」のことで、海外では一般的に知られた名詞になっています。さらに当社のサービスでは、単なる一拠点のサービスではなく、“多拠点”というところをツールとしているのが特長です。

海外では例えば、WeWorkが「WeLive」という形で、住まいのシェアリングをカナダとニューヨークで始めています。ほかにもロームネットワークが、バリやニューヨークで、ノマド向け住まいを提供しています。夏はバカンスを兼ねてバリ、忙しい時にはニューヨークで仕事というスタイルで、住まいの使い分けを提案しているのです。いずれのサービスでも、オフィスやアメニティが付属しており、ホテル暮らしのような生活で仕事ができるというものです。

ところで、これらの海外のサービスは、ほとんどが月額18~30万円。しかし、ADDressは月額4万円のサービスにしました。もちろん、アメニティを用意しており、身一つで住める環境を整えています。まあ、なぜ4万円でできるのかというのは、この後紹介いたします。

サービスのもう一つの特徴は地域に住まう人との交流。

民泊のようにただ宿泊するだけではなく、実際に住まいとして提供するので、その地域の方たちと一緒に「祭りを楽しむ」「収穫体験をする」などに加えて「地域で仕事をする」「お店を開く」などの、地域とのより深い交流を楽しめます。

月4万円を可能にする!

では、なぜこのようなことが可能かと言いますと、日本には、空き家やバブル時代の別荘、古民家などが大量にあるからです。これを活用し4万円という低料金を実現できました。

当社では、古い家屋を快適な空間にリノベーションし、個室を整備して、Wi-Fiも完備しています。

ホテルなどでは、ネットの回線が細いなどの理由で仕事がしづらいケースもありますが、ADDressは近隣のコワーキングと提携を行い、職場として利用できる環境も目指しています。

私は日本の空き家の問題を解決したいのです。日本の空き家は現在、約800万戸ですが、10年後には2,000万戸まで増えるといわれています。日本は新築信仰が強く、人口が減り空き家が増えているにもかかわらず、いまだに新築購入率が80%を超えています。解決には、もっと地方にIターンやUターンの人が住める環境をつくらなければなりません。それもシェアリング型で、安く、地域との交流ができる環境を作りたかったのです。

始まるADDress生活

第1弾は11拠点を、都心から1~2時間で行ける群馬や千葉、神奈川などに展開します。さらに福井、鳥取、島根なども準備中で徐々に増やしていきます。

お気づきの方もいるかもしれませんが、実はサービス展開にあたっては民泊で起きたトラブルの反省を多く入れています。先程触れたように地域との交流はもちろん、物件ごとに暖簾や旗を置き、ADDressがここにあるというのを示していこうと思っています。民泊は「だれが住んでいるか分からない」「そこにあることも分からない」という不安が地域住民にありましたよね。

また、交通の便が悪いところもあるので「ADDressカー」のようなものをつくって、みんなで相乗りするなんてことも考えています。

一部のサブリース物件では、管理人を置きます。彼らが会員内や地域のイベント参加など交流のハブ的な存在になります。

管理人は給料が5万円。掃除やアメニティなどの補充は掃除担当(パート、シルバー人材)をほかに置き、管理人はかれらを管理するだけです。いずれもリタイアされた年配の方や、パートで引き受けてくれる主婦の方などを活用していきます。

契約的には旅館業法の民泊ではなく、賃貸借で1年間契約をしてもらいます。ユーザーは、固定のドミトリーベッドを1人1つ、1年間持てますので、そこに自分の荷物を置いておくことができ、そのベッドも1カ月単位で移動可能です。

料金体系ですが、金額的には「月4万円・年間48万円」のサブスクリプション型の住まいというのが基本。しかし、「1カ月だけ試しに使ってみたい」という方には1カ月5万円のコースもクラウドファンディングで用意しました(現在定員に達し募集停止中)。

これらに加えて法人会員も募集しています。企業の福利厚生やサテライトオフィス、テレワークの場所として使う場合は月8万円で、企業内で共有可能という条件の会員となります。すでにリクルート、ユニリーバ、キャンプファイファーなど5社の利用が決まっています。企業は自社でつくるより、ずっと安価にできるのです。

物件の管理・運営・展開は?

先程の賃貸借契約をもう少し説明します。

固定のベッドと、個室に関しては共同賃貸借契約にしています。つまり、全住民で全室を共同で借りているという形です。法的にはその中の部屋を1日だけ2日だけ使うという方がいても問題ないのです。

ホテルと異なり、住まいなので本人確認は必要ありません。会員制サロンのような形なので、安全性も高いと考えています。

物件は自分たちで購入するケースもありますが、基本は提携先から空き家などを丸ごと1棟借り上げし、リノベーションを行い、それを貸し出します。

また、個室をサブリースしていく形式もあり「シェアハウスで1部屋空いている」「ゲストハウスで1部屋だけ貸してもいい」という方から、部屋単位で借り上げる方法も用意しています。

さらに旅館やホテルの空部屋も借り上げ提携先の候補で、閑散期などに1部屋単位で借り受けて、貸し出そうと思っています。

他企業・自治体との連携も

全日空と連携し、実証実験を行う話があります。

我々が管理する物件に航空チケットを付けて販売する内容で、最初は30人に対し無料券を配布し、当社の物件を使用してもらいます。全日空が「航空機を利用していない世代に対してアピールできるなら」ということで今回の提携になりました。

また、田舎の家を借りるADDressは、都心部には泊まりづらいという弱点がありますが、都心は「ホステルパス」というゲストハウス泊まり放題の会社と提携します。彼らのサービスと提携しても5.5万円程度でサービスを提供できそうなのでご期待ください。

自治体では大津市と連携します。同市の琵琶湖周辺には、バブル時代の企業保養所が200件ほどあり、3分の1が使われていません。大型施設の空き家というのが非常に困った存在になっており、我々で活用させてもらおうという話になっています。

大津市では、市内の優良な立地にコワーキングスペースを設置するそうで、施設の関係人口を増やすためADDressの会員に対して無償提供する取り組みをしていきます。

自治体提携プランでは、このほか学校のシェアリングをしていきたいというものがあります。都心部にいるという人たちが、いつでも地方の小中学校に2~3カ月ほど留学できるというものです。学校のシェアができれば家族連れがADDressのを使いやすくなります。

もう一つがワークシェアで、地域の仕事をADDress会員ができるようにするマッチングを考えています。商工会議所や青年会議所から、パートタイムや業務委託、週2日の正社員などさまざまな形で会員が仕事を請けるのです。都市部の人が持っているデザインやIT系の高いスキルを活かせるため、両者に利益があります。

将来展望は

「安価過ぎて大丈夫か」という声もありますが、都心の感覚と異なり、田舎でシェアハウス4万円というのは、ちょうどよい値段です。また「無償に近い形でもいいから、空き家を使ってほしい」という自治体や企業、現地の方々の協力もいただいており、これらを活用するので安心してください。

顧客の規模は4月1日の段階でまずは30人。現在、問い合わせが1000人以上あるので、会員数60人までは見えており、48万円×60人に入金いただき、これを赤字にならない形で運用していこうと考えています。

発表後、テレビの取材も多く受けており、申し込みはもちろん「うちの物件を借りてほしい」という話が多く舞い込んでいます。

スタート後の目標は、地域交流とそこでの仕事を作るなどです。その地域の企業に会員のスキルを提供することを手始めに、ADDress利用者の中から地方でカフェやりたい、ビールづくりをしたいという人がいれば、チャレンジショップのようなお店も展開できると考えています

なにしろ、僕自身がこのビジネスのモデルユーザーなので、それを証明していきたいというのが今一番思っていることです。