12月5日、「政治イベントはつまらない!」と銘打った勉強会が開催された。どこで?
そう、日本で最も“政治”な場所である永田町国会議員会館の会議室で。だ。
政治イベント、と聞いたとき私の頭の中にぱっと浮かんできたのは、なんだか小難しいセミナーや、街中での演説、旗を何本も立てながら握手を求め声を張る、そんな国会議員の姿だ。まあ確かに「オモシロ」ではない。「オモシロくない」ものには人が集まらない。しかしそこに投じられる資金の多くは巡り巡って税金なのではないだろうか。実にもったいない。そんな現状に対して真っ向から改善策を見出していこう、そんな会である。
政治イベントはつまらない?じゃ「オモシロい」ってなんやねん!
今回登壇してくださったのは、東京カルチャーカルチャー、イッツ・コミュニケーションズでコミュニティ・アクセレーターとして活躍する河原あず氏とPeatix Japanでジェネラルマネージャーとして活躍する藤田裕司氏だ。2人が具体的にどんな活動をしているか等はここでは割愛するが、主にイベントをオーガナイズしたり、コミュニティづくりの手段を提供していたり、ある種「オモシロい」のプロフェッショナルといえるであろう。
そんな人たちが考える「オモシロい」。それは大きく3つに区分されると述べた。
①一緒に作る
②たくさん集める
③フォーマット×テーマ
まず1つ目の一緒に作る、というのは顧客・参加者と企業・運営側が一緒に何かを企画することで親近感を生み、ただ参加する以上のやりがいや個人の喜び、企業やプロダクトへの愛着を持ってもらうという一連の流れを指すオモシロさ、である。これは確かにそうだなあと感じた。イベントにただ参加することももちろん楽しいが、「楽しかった」か「楽しくなかった」で完結してしまいやすい。自分がその企画に携わることができれば、参加する楽しい、はもちろん、途中もっとこうしたらいいのに、という意見を出すことができたり、その意見が採用されて自分のアイデアが形になる過程を目の当たりにしたりすることでより実体験的な「オモシロ」を感じることができるだろう。愛着のあるものは広報もしたくなるし、企業側にとってもいやらしくない健全なPRを行うことができる。
2つ目にたくさん集める、だが、これはのちの項に出てくるがとにかく人数集めよう!というような話ではない。「層」の話である。過去に河原氏が企画したイベントを見てみると、“看護師50人イベント!”や“保育士限定イベント!”などが開催されている。想像できるだろうか。看護師や保育士、職場が違えば年齢も様々、ただみんなが同じ仕事、そんな人たちが一か所に集まったら。きっと普段話せない深い話が生まれるのではないか。世の中に「オタク」と呼ばれるジャンルごとのコアなコミュニティがあるように、共通点のある人間同士の拡散力は凄まじい。ここに企業などがタイアップすることで、参加者は共通の何かを持つ人間と出会えるし、企業はそこで新しいアイデアやインフルエンサーを手に入れることができる。まさにwin-winの関係である。これも1つ目と同じく、イベントのオモシロさという観点から見るととてもオモシロい。
そして最後にフォーマット×テーマ。フォーマットというのは既存の何か、例えば、フリースタイルダンジョンであったり、ドラフト会議であったり、学校であったり運動会であったり、何でもいいのである。みんなが知っていて、おもしろそうな“何か”。そこに、テーマ、その時取り上げたいものを掛け合わせていく。これが「フォーマット×テーマ」だ。河原氏いわく、このフォーマットとテーマは離れているものであるほどオモシロくなるという。
ざっくりだが上記3点は全てオモシロくするために必要なこと、つまり、「オモシロい」の材料であることが分かった。オモシロいを作るのは、いつも人である。運営する側、参加する側の楽しさへの意欲が等しければ等しいだけ、高ければ高いだけ、「オモシロい」の種がたくさん生まれるのではないだろうか。
「コミュニティ」が作る364日
イベントはあくまでも何かをするための手段に過ぎない。そんな中で大切になってくるのがイベントの1日の楽しさ、そしてそれと同じくらいに、“何もない364日”に何ができるかを考えることだと登壇者両氏は言う。世の中のオモシロいの根底には「コミュニティ」の存在が必要不可欠である。1回のイベントをきっかけに継続したコミュニティを築くためのポイントは以下の4つである。
①刺さるテーマ設定
②登壇者と参加者の繋がりを作る
③人数を考える
④マルサンコミュニティの法則
私が特に「なるほど!」と思ったのは後半2つ、人数とマルサンの話だ。
まず人数であるが、「たくさん準備して登壇者も呼んで、会場も抑えられそうだし人いっぱい呼ぶぞ~!」と思ってしまいがちなイベント開催。ここで大切なのは、“呼ばない勇気”だと河原氏は述べる。イベント経験豊富な登壇者いわく、運営者の熱量や語り手の思いが伝わりやすい人数は大体30~50人だという。そのくらいの人数設定にすることで参加者1人1人 にフックがかかりやすくなりより継続したコミュニティが形成できる。
そして③とも関連する④のマルサンコミュニティについて。河原あず氏が編み出したこの法則について、自身のブログ「イベログ」で以下のように述べている。
「コミュニティ・ベース」の人数は増えても、1回のイベントに呼ぶ人数はコントロールして、50人程度におさめるのが大事なポイントなのです。そのバランスがうまく作れると「コア(マルイチ)がコミュニティの柱を担い」「常連(マルニ)が場のエンジンになり」「新人(マルサン)がフレッシュなアイデアや人脈を持ち寄る」という、理想的な場が運営できます。大事なのは「コア」と「常連」は、役割の違いであって、ポジションの優劣はないということです。
(引用:http://azkawahara.hatenablog.com/entry/2017/02/20/060000)
つまり、コアだけでも新規だけでも、たまに来る常連だけでもなく、継続を考えるなら三社が理想的な比率でイベントにコミットし続けられる環境が求められるのである。話は初めに戻り、これを政治イベントに置き換えて考えてみると、常時政党や個人を支持しサポートしてくれている支援者を大切にすることはもちろん、オープンなマインドと組織形態を持ちながら新しい層にも手を伸ばしていかなければ継続的なファンを増やし、コミュニティを広げていくことは難しい。単純なようでこれが意外とうまくいかないのは、世代間のギャップであったり、興味の対象が多様化しているからなのだろうか。これからの社会には何が求められるのだろう。
「競争」から「共創」へ ~多様な社会にどう挑むか~
近年、といっても私はまだ21年しか生きていないが、それでもここ10年くらいの急速な社会の変化は目を見張るものがある。スマートフォンやSNSの普及により、誰もが簡単に、溢れかえる情報の中から自分に必要なものを選んでいく、そして同時に他人の価値観やグローバル化する世界における異国の文化など、多様すぎるほど多様な社会を受入れていかなければならない。その多様性と共存することが、イベントを企画し運営する側にも求められる時代になっている。
政治においても何においても、イベントを運営する上で大切なことは「イベントをする」という目的ではなく、「何のために」「誰のために」を考え抜くことであると藤田氏は述べる。今までの年功序列的な考え方や、日本人特有の“言わずもがな”なスタイルから脱却した、オープンでフラットな環境が常に求められているのである。その中で、何のために・誰のためにというのは経費やイベント自体の実施に躍起になる中で忘れ去られてしまいがちなことだ。しかし立ち返ってみるとやはり、なぜやっているのかが明確になればなるほど、やらなければいけないことや話を聞くべき人間の姿が見えてくる。
日本人は自分の意見を表に出すことを良しとされない文化の中に生きてきた。そんな日本だからこそ、「みんなで考える、みんなで作る」をベースとした“共創”を取り入れることが次なる革新へと繋がるのではないか。多様化する社会だからこそ、受け入れることはもちろん、政治も、そして個人も、もっと多様性を体現する権利を持てるはずである。政治家だって分からないことはある、若者だってもっと日本を楽しくしたい。先入観を捨てどんな壁にも捉われないニュートラルな考え方が、きっと何かをもっと「オモシロく」する。
2018年12月5日:K女子大ぱにゃ by山口花